胡錦濤論

胡錦濤 新しい政治スタイルは実現するか

 こんにちの中国において共産党の力は絶大である。胡錦涛の依拠する最大の基盤もこの共産党にあり、とりわけそれぞれの現場における指導的幹部たちである。かつて苛酷な革命闘争、戦争の時代にあっては共産党に入党することは自分の命を党に委ねるに等しく、彼らの行く手にはいつも死が待ち構えていた。しかし共産党が政権を獲得してからもう半世紀以上が経過した。こんにちでは入党を自己の出世の手段と見なしている者が実に多い。本来は人民のために働くもの、奉仕するものであるはずだが、実際には人民のうえで居すわり威張り散らす者がいる。彼らの脳裏には官本位の思想が根強く染みついている。権力を悪用し、私腹を肥やす腐敗分子も増大しつつあり、その根絶は容易なことではない。胡錦涛たち新指導部が差し迫って解決すべき問題は山積している。
 人々を動かすにはまずみずからが動くこと、率先して模範を示すことがもっとも大切である。胡錦涛はその重要性をよく理解している政治家である。彼はみずから先頭に立ってSARSとの戦いを展開し、勝利を収め、経済の持続的な発展をも実現した。中国の人々の彼への評価が高いのも、このような具体的な実践を目にしているからである。あたかもこの間の奮闘ぶりを祝福するかのように、「神舟五号」による有人宇宙飛行が成功した。さらなる成果を勝ち取るには、口先だけの美辞麗句を並べ立てるのではなく、人々の暮らしを改善させ、社会を民主的なものにすることを一つ一つ具体的に実現していく以外にない。
 「胡錦濤 新しい政治スタイルは実現するか」許介鱗・村田忠禧編『現代中国治国論 蒋介石から胡錦濤まで』(勉誠出版 2004年7月出版)